保育従事職員宿舎借り上げ支援事業についての陳情
陳情07-4
付託委員会:子育て・若者支援特別委員会
審査日:令和7年2月17日
議決日:令和7年6月25日
議決結果:取り下げ許可(全員賛成)
陳情7−4
保育従事職員宿舎借り上げ支援事業についての陳情
<陳情の趣旨>
台東区内の企業主導型保育施設を、保育従事職員宿舎借り上げ支援事業の支援対象に含めることを求めます。
※企業主導型保育事業および本支援事業の概要や他自治体の先行事例については別添資料をご参照ください。
<陳情の理由>
@ 台東区における企業主導型保育事業の実施状況
企業主導型保育事業は平成28年に内閣府が主導して待機児童対策等を目的とし、厚生労働省が所管する認可保育所等とは違う枠組みのもと、保育所への助成を行う制度です(別添資料[@])。「企業主導型」ということで、企業内保育所(事業所内保育所)と似た制度と思われることが多いですが、必ずしもこれに限られず、保育事業者(企業)が一定の条件のもと国(内閣府(※現在は子ども家庭庁))の助成金を得て保育所を設置、運営する場合が広くこの事業に該当します。
現在台東区内には8園の企業主導型保育施設(企業主導型保育事業に基づき設置された保育施設)がありますが、いずれも特定の企業からの受け入れを前提とした企業内保育所的な形態ではなく、いわゆる民営の保育所のうち、上記のように子ども家庭庁の助成金を受けて運営しているという保育所になります。
A 企業主導型保育事業の抱える問題点
企業主導型保育施設は、厚生労働省及びこども家庭庁の管轄のもと自治体が運営する認可保育所等とは異なり、いわゆる認可外保育所に該当します。他方で、実質的には、認可保育所等と同等の設置基準をみたす必要がある施設であり、また夜間保育や土休日保育などの認可保育所等が行わない保育事業を展開しているため、認可保育所等と同等の安心感を持ちつつ多様な保育を必要とする保護者の利用ニーズをくみ取れている施設でもあります。また、特定の企業の社員に限り利用できるという形態でもなく、近隣の住民に広く利用が開かれています。認可保育所等がフォローしきれていない保育ニーズに対応しているという自負もございます。
しかしながら、認可外保育施設というくくりになってしまうため、現状は台東区内の認可保育所等が受けている保育従事職員宿舎借り上げ支援事業に基づく補助金支給の対象外となっています。また、区の保育園の募集要項などにも掲載されないため、保護者からは一見その存在が知られにくいですが、一旦存在と制度を知っていただいて、ご利用いただいている保護者の皆様からは、もっと広く企業主導型保育施設のことを知らせてほしい、とのご意見も多数いただいております。
B 他制度との比較
認可保育所等以外の保育所でも、東京都の認証保育所は本来認可外保育所というカテゴリーですが、東京都の認証を受けているということで保育従事職員宿舎借り上げ支援事業の支給対象にもなっています。もっとも、認証保育所等も私立園であり、一定の条件のもと認証されてはいますが、保育料や保育士の給与は、事業者が独自に決定することができているという意味では、企業主導型保育施設と変わりません。
また、台東区には2園の事業所内保育所(企業主導型保育施設とは異なる地域型保育事業のひとつ)があり、いずれの施設も設置企業の園児を中心として募集しておりますが、
こちらはいずれも保育従事職員宿舎借り上げ支援事業の対象となっています。
企業主導型保育施設は、民間事業者による経営によるものではありますが、保育事業については補助金による施設運営に依る部分が大きいため、保育園事業以外の他事業を行っていない事業者(純粋保育事業者)が設置する企業主導型保育施設の場合には、事業者の利幅が極めて少なく、保育士への独自の家賃補助を自助努力で行うことは事実上難しいです。区の認可保育所等ではなくとも都の一定基準を満たして認証保育所等という扱いになっている民間事業者とのこのような区別が適当であるのか、我々台東区内の企業主導型保育施設事業者は疑問に思っております。
C 保育士への家賃補助が特に若年の保育士確保において極めて重要であること
企業主導型保育施設においては上記のとおり保育従事職員宿舎借り上げ支援事業の対象外であることから、実際に、台東区内の保育園各園においても施設運営が困難になってきている現状があります。我々台東区内の企業主導型保育所8園のうち全員が、毎年、家賃補助がないことを理由に採用困難に陥った経験を有しています。なお、台東区を含む多くの市区町村では、保育従事職員宿舎借り上げ支援事業の対象者を「住民基本台帳法第7条に定める住民票上の世帯主である者又はこれに準ずる者」と定めています。要するに対象者は単身者に限定されており、主に婚姻をしていない若年層の保育従事者がこの制度を活用しています(別添資料[A])。
実際の運営上、婚姻をしている保育従事者は家庭の事情等により勤務可能時間が限られているケースが多く、早朝や夜間の勤務は単身者の若年層の保育従事者が担うことが多くなっています。
特に企業主導型保育事業は、早朝・夜間の開所、少人数の手厚い保育、宗教食対応など、多様なニーズに応える役割を担っています。このため、柔軟な勤務が可能な若年層の保育士確保が重要であり、本支援事業が対象外であることはその実現を妨げています。
このことから、保育従事職員宿舎借り上げ支援事業の有無が認可保育所等では対応が難しい多様な保育ニーズに応えるためには重要であると考えます。
D まとめ
以上の次第であり、認可外保育所である企業主導型保育施設についても、台東区内の認可保育所等ではくみ取りにくい保育ニーズに応え区民の保育の受け皿となっていること、認可保育所等と同等の設置基準を満たしていることをご理解いただき、補助金の支給にかかる保育士の待遇についてはせめて認証保育所、事業所内保育所と同等という扱いを実現させていただきたく、本陳情を申し上げる次第です。
森議長以下区議会議員各位におかれましては、保育士の待遇改善という大きなテーマとして捉えていただき、ご検討のほどをどうぞよろしくお願いいたします。
令和7年1月24日
台東区議会議長
森 喜美子 殿