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詳細情報

件名

台東区内に残る関東大震災復興遺産である復興小学校校舎の保全についての陳情

受理年月日

受理日:平成24年2月6日

受理番号

陳情24-8 

付託委員会

付託委員会:文化・観光特別委員会
付託日:平成24年2月6日
審査日:平成24年2月16日

本会議議決結果

議決日:平成24年3月21日
議決結果:趣旨採択(全員賛成)

内容

陳情24-8(写)
   台東区内に残る関東大震災復興遺産である復興小学校校舎の保全についての陳情
 1923年の関東大震災の復興事業(以下、帝都復興事業)により建設された小学校校舎群、いわゆる復興小学校は、現時点において、日本建築学会より国指定重要文化財級の建築物であるとの評価がなされております。
 復興小学校舎は帝都復興事業完了時までに117校建設されましたが、現在も現存するものはその一割程度に過ぎず、復興事業と時期を同じくする改築による小学校舎を含めても、その数は30校前後となっております。台東区においては、黒門小学校・旧下谷小学校・東浅草(旧待乳山)小学校※・旧柳北小学校※・旧小島小学校(現・小島アートプラザ)※及び、関東大震災における焼失地に隣接し同時期に建設された旧坂本(旧入谷)小学校の6校舎(※は小公園を併設)がこれに相当します。
 これら復興小学校が高い価値を持つ主要な理由として、以下の点が挙げられます。
(1)高い理想に基づく優れたデザインの歴史的遺構である
 震災復興の際に東京市が作成した小学校建築の設計規格は、児童の健康と安全を重視し、良好な教育環境を整えるという当時の東京市の高い理想にもとづくものでした。その規格にもとづいて設計された各校舎は、近代建築史上および近代教育行政史上、高い価値をもつ建築物であると位置づけられます。これらの校舎の外観のデザインは互いに異なる個性的な特徴を持ち、いずれも表現主義的なデザインによる建築の秀作として高く評価されます。表現主義の建築は当時のヨーロッパで流行していた最新の建築思潮を取り入れたもので、当時の日本においてはきわめて斬新なデザインでした。
(2)地域のシンボルであり、景観上のランドマークとなる
 復興小学校の多くは隣接する小公園と一体的にデザインされ、現在も公園とともに豊かな都市空間を周辺地域にもたらしています。昭和初期とは異なり、都市部に空地が減って稠密化している現代において、復興小学校は街区の中の貴重な解放空間として良好な生活環境の保全に重要な役割を果たしています。復興小学校の多くは現在も地域コミュニティの核として機能しており、その文化社会的役割には大きいものがあります。各校舎の外観は、互いに異なる個性的な表情を持っていますので、公園から一望できるその外観は、地域のアイデンティティをかたち作るランドマークとして、現代における存在意義も決して小さくありません。
(3)地域の重要な防災拠点となる
 復興小学校は、関東大震災被害への反省から、地域の重要な防災拠点となるべく設計されています。校舎も堅牢に建造され、耐震性については現在もほとんど問題がないとの報告もされております。小公園を併置したその設計も、災害時対応において非常に有効で、事実、阪神大震災においてこの形式の小学校が効果的に機能したとの報告もなされており、今後かなりの確率で想定される首都直下型地震への供えとして、地域における復興小学校の存在はより重要性を増しています。
 以上の点を踏まえ、台東区内に残存する復興小学校においては、竣工以来の関連建築図書を適切かつ速やかに発見・保管し、建物の実測調査や資料化を適宜行うとともに、できる限りでの現存建物の保全への努力を行うようお願い致します。また、廃校となった復興小学校は単に文化財として保存するだけではなく、新たな機能を加えることにより、文化的観光スポットとして台東区の観光政策に取り込む、地域産業の発展をサポートする場とするなど地域住民や専門家の意見を取り入れて、経済的効果を得るような積極的な利活用のご検討をお願いいたします。
 さらには、関東大震災復興の際における先駆的試みとしての復興小学校が持つ意味を、東日本大震災の復興が急務である今こそ、台東区が先陣をきって世に知らしめる必要もあるかと思われます。研究成果を文書化して公開発信する、復興小学校を会場にして復興関連の学術会議を行うなど、積極的なアピールの方策検討をお願い致します。
 現在、各区とも復興小学校校舎の保全・活用の動きはまだ充分とは言えませんが、千代田区は九段小学校の調査に本年度より着手しましたし、中央区の常盤・泰明・城東・阪本などは現役小学校として地域に愛されています。復興事業と時期を同じくする改築による早稲田(新宿)・高輪台・広尾(港)などは校舎の大規模な改修を行い今後も小学校として長く使用していくことを決めています。また、四谷第四(新宿)のように廃校後も地域住民の努力によりおもちゃ美術館や地域センターとして積極的な利活用を実施している校舎や旧箱崎小(現箱崎ピット・中央区)のように東京都の芸術事業に活用している例もあります。一方、中央区立明石小学校、中央小学校のように状態のよい事例を建築学会等の要請にもかかわらず、解体するという事例も見られ、文化財級の建築物が失われていく事態も生じております。当区においても昨年旧福井中学校が解体されました。
 近年、各専門の学会でも関東大震災復興事業の再評価作業が進んでおり、土木学会では、復興橋梁や復興事業で形成された街路空間の現況把握と保全活動などがなされています。また同様に日本建築学会では、復興小学校・小公園、主要復興建築はじめ、帝都復興遺産の現況把握とその保全活動に取り組んでいます。この他にも、有志による様々な復興遺産研究保全の試みが行われてきています。(その一例として、復興小学校研究会による一連の研究成果をこの陳情書に添付致します。)
 台東区におかれましては、国、東京都のみならず、これら学会や研究会とも緊密な連携を取り、文化的遺産たる復興小学校の、有効な保全活用の道を模索する態勢を構築していただけるようお願いを申し上げる次第です。神谷バー建物(大正10年)が登録文化財に指定され、浅草松屋も創建時(昭和6年)の姿に戻り、隅田川復興橋梁群の再評価も高まっている昨今、可能であれば復興小学校舎群も台東区における地域の歴史的資源として活用されることを切に希望致します。
 最後になりますが、陳情者たる当市街地寺院研究会は、復興小学校の保全活用に際して、区に対しできる限りの協力をする所存であるところを付け加えておきたいと思います。(以上)
  平成24年2月2日
台東区議会議長
   青 柳 雅 之 殿

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