「地方消費者行政の抜本的拡充に必要な法制度の整備及び財政措置を政府等に求める意見書」を提出することを求める件についての陳情
受理日:平成20年9月12日
陳情20-32
付託委員会:産業建設
付託日:平成20年9月12日
審査日:平成20年10月1日
審査結果:趣旨採択(全員賛成)
議決日:平成20年10月24日
議決結果:趣旨採択(全員賛成)
陳情20−32(写)
「地方消費者行政の抜本的拡充に必要な法制度の整備及び財政措置を政府等に求める意見書」を提出することを求める件についての陳情
≪陳情の趣旨≫
政府が進めている消費者行政一元化・強化の推進を踏まえ、政府及び国会に対し、以下の事項を求める意見書を採択提出するよう陳情する。
(1)被害情報の集約体制を強化し国と地方のネットワークを構築し、消費者の苦情相談が地方自治体の消費者相談窓口において迅速かつ適切にあっせん処理ができるよう、消費生活センター設置、業務、機能等を法的に位置づけ、これに必要な法制度を整備すること。
(2)地方消費者行政の体制・人員・予算を抜本的に拡充・強化するための財政措置をとること。
≪陳情の理由≫
1 消費者被害の多発と消費者の不安
近年、食品の安全・表示の分野における食品偽装表示事件の多発や輸入冷凍餃子への毒物混入事件、製品の安全の分野におけるガス湯沸かし器一酸化炭素中毒事故やシュレッダー指切断事故、取引・契約の分野における次々販売被害、クレジット被害、多重債務被害、投資詐欺商法、架空請求・振り込め詐欺事件など、消費者を取り巻く様々な分野で消費者被害が相次いでいる。
全国消費生活センターへ寄せられる苦情相談件数は、1995年(平成7年)度が274,076件であったものが、1998年(平成10年)度には415,347件、2002年(平成14年)度には873,663件、2006年(平成18年)度には1,111,695件と、大幅に増大している。2003年(平成15年)度から2005年(平成17年)度の架空請求事案による相談件数の激増時期を除外しても、12年間に3倍〜4倍に増大している。
こうした消費者被害の増大に対する消費者の不安・不信は、健全な市場経済の発展にまで悪影響を及ぼしていると指摘されている。
2 国の消費者行政推進と地方消費者行政の位置づけ
(1)消費者行政推進会議の提言
このような中、政府は、消費者・生活者重視への政策転換、消費者行政の一元化・強化の方針を打ち出し、「消費者行政推進会議」(以下「推進会議」という)を設置し、2008年(平成20年)6月13日、「消費者行政推進会議取りまとめ」(以下「取りまとめ」という)を発表した。
「取りまとめ」によれば、明治以来のわが国の行政は、各省庁が各領域の産業育成を通して国民経済の発展を図ってきたが、消費者の保護は産業振興の間接的、派生的テーマとして縦割りで行われるにとどまったことを指摘し、規制緩和など市場重視の政策の下では、安全安心な市場の実現こそが公共的な目標として位置づけられること、そのためには行政の価値規範を「消費者の権利の尊重及び自立の支援」に転換することや、縦割りの体制に対して消費者行政の一元化が必要であること、などを提言している。
(2)地方消費者行政の位置づけ
その中で、「取りまとめ」は、「霞ヶ関に立派な新組織ができるだけでは何の意味もなく、地域の現場で消費者、国民本位の行政が行われることにつながるような制度設計をしていく必要がある。このため、新組織の創設と併せて、地方分権を基本としつつ、地方の消費者行政の強化を図ることが必要である。」と、地方消費者行政の重要性を明示している。
自民党消費者問題調査会の2008年(平成20年)3月19日付け提言も、消費者庁の新設と並んで、「地方消費者行政の充実」「相談窓口の一元化」を重要課題として位置づけている。民主党の「消費者権利擁護官構想」も、国民生活センター及び消費生活センターを消費者権利擁護官の下において情報集約することを想定しており、地方の消費者相談窓口を拡充・強化することが消費者行政を強化する基盤であるという認識において、共通するものである。
(3)政府の消費者行政一元化の進行予定
政府は、推進会議の「取りまとめ」を受け、秋の臨時国会において「消費者庁設置に関する法案」「苦情相談、情報集約、調査措置等に関する法案」「個別法の所管(移管・共管)に関する法案」等を制定し、2009年(平成21年)4月にも消費者庁を創設する、という意向を示している。
(4)地方消費者行政の充実に対する国と地方自治体の役割
「取りまとめ」は、「地方の消費生活センター及び国民生活センターを消費者が何でも相談でき、誰もがアクセスしやすい一元的な消費者相談窓口と位置づけ、全国ネットワークを構築する。」、「窓口では、相談受付から助言・あっせん、紛争解決まで、一貫して対応する。」ことを提言している。
さらに、「地方の消費者行政部門の状況をみると、予算は大幅に削減され、総じて弱体化している。地方の消費者行政をこの1年〜2年の間に、飛躍的に充実させるためには、特に当面、思い切った取組が必要である。」としたうえで、「消費生活センターを一元的な消費者相談窓口と位置づけ、・・・法律にも位置づけを行うことを踏まえ、国は相当の財源確保に努める。」と提言している。
但し、地方自治体自身が消費者相談窓口及び消費者行政を抜本的に拡充・強化する取組があってこそ、国の法制度の整備や財政支援が意味を持つものであることはもちろんであり、「取りまとめ」は、この点につき「地域ごとの消費者行政は、自治事務であり、地方自治体自らが消費者行政部門に予算、人員の重点配分をする努力が不可欠である。」と指摘している。
3 地方消費者行政の現状と背景
(1)地方消費者行政予算の推移
地方消費者行政の予算(都道府県・政令指定都市・市区町村合計)の推移を見ると、ピーク時の1995年(平成7年)度が約199億円であったものが、1998年(平成10年)度には163億円、2002年(平成14年)度には149億円、2006年(平成18年)度には116億円、2007年(平成19年)度には108億円と大幅に減少しており、2007年(平成19年)度は1995年(平成7年)度に比べ約54%(約46%減)に減少している。
消費者行政担当職員数(事務職員・相談員・技術職員合計)の推移をみても、過去10年間の中でピーク時の2002年(平成14年)度の13,664人から、2007年(平成19年)度は10,212人と減少しており、約75%に削減されている。
┌─────┬────────────────┬─────────────────┐
│平成・年度│ 消費者行政予算(百万円) │ 行政職員数(人) │
├─────┼──────┬─────────┼──────┬─────┬────┤
│ │(都道府県)│(市町村含む合計)│(事務職員)│相談員 │ 合 計 │
├─────┴──────┴─────────┴──────┴─────┴────┤
│7年度 12,694 19,992 9,453 2,335 12,004 │
├────────────────────────────────────────┤
│10年度 9,971 16,379 10,172 2,383 12,768 │
├────────────────────────────────────────┤
│12年度 8,898 16,539 10,296 2,676 13,174 │
├────────────────────────────────────────┤
│13年度 8,031 15,609 10,342 2,918 13,458 │
├────────────────────────────────────────┤
│14年度 7,962 14,999 10,397 3,061 13,664 │
├────────────────────────────────────────┤
│15年度 6,359 13,101 10,093 3,144 13,409 │
├────────────────────────────────────────┤
│16年度 6,428 13,034 9,253 3,314 12,710 │
├────────────────────────────────────────┤
│17年度 5,676 12,211 7,873 3,342 11,359 │
├────────────────────────────────────────┤
│18年度 5,158 11,605 7,113 3,732 10,957 │
├────────────────────────────────────────┤
│19年度 4,606 10,830 6,572 3,539 10,212 │
├────────────────────────────────────────┤
│減少率 36.3% 54.2% 63.2% 94.8% 74.7%│
└────────────────────────────────────────┘
※内閣府消費者調整課資料から圓山茂夫隼教授が作成
※減少率は、ピーク時に対する19年度の割合
(2)地方自治体における消費者行政の位置づけ
これについて、地方自治体全体が財政難であるから消費者行政予算・人員の削減もやむを得ない、という意見も聞かれる。
しかし、地方自治体の一般会計予算の推移をみると、過去10年間でピーク時の2001年(平成13年)度が89兆3071億円であったものが、2007年(平成19年)度には83兆1261億円であり、約93%(約7%の減少)にとどまる。一般行政部門の公務員数は、02年度を100%とすると07年度は91%(約9%の減少)となっている。
つまり、地方自治体の財政難に伴う予算・人員の減少幅に比べ、消費者行政予算・人員の減少幅が異常に大きいことは明らかである。地方自治体の組織面においては消費者行政の縦割りの問題は少ないといわれているが、予算・人員の措置を見る限り、消費者行政は軽視されてきたというほかない。
(3)地方消費者行政の機能不全
地方自治体は、消費者から寄せられる苦情相談を専門的知見に基づき迅速かつ適切にあっせん処理することが求められ(消費者基本法第19条第1項)、国及び都道府県は、消費生活相談員の人材の確保及び専門性の向上に努めることが求められている(同条第2項)。
ところが、近年、消費者トラブルが増大しているにもかかわらず、地方消費者行政の予算・人員が大幅に削減されてきた結果、地方消費者行政の機能不全が深刻となっている。
例えば、消費者相談窓口は、消費生活相談員の配置人員の不足や、専門的研修の不足などにより、時間と専門的知見を要するあっせん処理の割合が、1998年(平成10年)度の9.17%から、2007年(平成19年)度の5.80%へと大きく減少している。
しかも、その消費生活相談員の地位が極めて不安定かつ劣悪である。解決困難案件の紛争解決機関である苦情処理委員会はほとんど開催されていない。また、商品テストの機器及び体制が大幅に削減された結果、商品事故の原因究明や品質表示の比較テストがほとんどできない実情にある。消費者に対する啓発・教育や消費者団体に対する活動支援も大幅に削減され、被害の未然防止を図る取組が困難となっている。
┌──────────────────────────────┐
│ 年度 相談件数 あっせん件数(割合)│
├──────────────────────────────┤
│ 98(H10)年度 415,347件 38,093件(9.17%) │
│ 99(H11)年度 467,110件 41,861件(8.96%) │
│ 00(H12)年度 547,145件 47,439件(8.67%) │
│ 01(H13)年度 655,899件 51,529件(7.86%) │
│ 02(H14)年度 873,663件 64,427件(7.37%) │
│ 03(H15)年度 1,509,884件 65,206件(4.32%) │
│ 04(H16)年度 1,919,662件 60,778件(3.17%) │
│ 05(H17)年度 1,302,177件 64,530件(4.96%) │
│ 06(H18)年度 1,111,695件 63,742件(5.73%) │
│ 07(H19)年度 1,038,090件 60,225件(5.80%) │
└──────────────────────────────┘
※国民生活センター:PIO−NET集計と、相談情報部資料から作成。
※03年〜05年は不当請求・架空請求等の苦情相談が激増。
(4)消費者行政が後退した背景
地方消費者行政の人員予算がこれほどまでに縮小・後退した背景には、消費者行政の法的位置づけが、他の行政分野では、例えば学校の教員や消防署員の定員を法制化したり、一定の事業を法的に位置づけるなどの法的措置があるのに対し、消費者行政分野では、地方自治体にすべてを任せるだけで消費生活センターの事業内容や職員定員の確保に関する法制度の手当ても、それに必要な財政措置もほとんどなされて来なかったことが指摘できる。
4 地方消費者行政の抜本的充実の必要性
地方消費者行政を抜本的に拡充し、真に機能する体制を実現するため以下のような措置が必要である。
第1に、消費者相談窓口において苦情相談を適切かつ迅速にあっせん処理できるよう、消費生活センターの設置、業務、機能等を法的に位置づけること、被害情報の集約体制を強化し国と地方のネットワークを構築すること等、これに必要な法制度を整備すること。
第2に、地方消費者行政の体制・人員・予算を抜本的に拡充・強化するための財政措置をとること。
これらは、消費者行政推進会議の「取りまとめ」において提言されている事項であるが、これを真に実現するためには、地方消費者行政の担い手である地方自治体から国に対して、積極的に法制度整備や予算措置を求める意見を出すことが必要である。
5 結び
以上の理由により、貴議会において、政府及び国会に対し、地方自治法99条に基づき、陳情の趣旨記載の意見書を採択されたく陳情する次第である。
≪添付書類≫
・地方消費者行政の抜本的拡充に必要な法制度の整備及び財政措置を政府等に求める意見書(案)
・日弁連リーフレット(1枚もの、8頁もの)
・消費者行政推進会議取りまとめ
平成20年9月8日
木 下 悦 希 殿