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陳情18-2 上限金利の引き下げ等により、中小零細事業者・消費者等の健全な生活を守り、多重債務問題根絶のため、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」及び「貸金業の規制等に関する法律」の改正を求めることについての陳情

受理年月日 平成18年9月15日 受理番号 陳情18-2
委員会付託日 平成18年9月15日 付託委員会 産業建設
委員会審査日 平成18年10月27日
議決年月日 平成18年10月27日 議決結果 趣旨採択
全員賛成
陳情18-2
  上限金利の引き下げ等により、中小零細事業者・消費者等の健全な生活を守り、多重債務問題根絶のため、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」及び「貸金業の規制等に関する法律」の改正を求めることについての陳情

陳情18−2(写)

   上限金利の引き下げ等により、中小零細事業者・消費者等の健全な生活を守り、多重債務問題根絶のため、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」及び「貸金業の規制等に関する法律」の改正を求めることについての陳情
【陳情の趣旨】
 台東区議会が、国会及び政府に対し、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(以下、「出資法」といいます。)及び「貸金業の規制等に関する法律」(以下、「貸金業規制法」といいます。)を下記のとおり改正するよう求める意見書を提出することを採択していただくよう陳情致します。
                     記
 1 出資法第5条の上限金利を、小額短期貸付などの例外を設けることなく一律に利息制限法第1条の制限金利まで引き下げること
 2 貸金業規制法第43条のいわゆる「みなし弁済」規定を撤廃すること
 3 出資法における日賦貸金業者及び電話担保金融に対する特例金利を廃止すること
 4 保証料名下での出資法及び利息制限法の脱法を禁止すること
【陳情の理由】
1 はじめに
  2003年(平成15年)7月、ヤミ金融対策法(貸金業規制法及び出資法の一部を改正する法律)が成立し、その付帯決議で、貸金業規制法及び出資法の上限金利の見直しをヤミ金融対策法の施行後3年を目途に行うことが定められています。その具体的期限が2007年(平成19年)1月ころになることから、金利の見直し等の法改正に向けて、今が極めて重要な時期にあると言えます。
2 多重債務問題の深刻化
  2000年、2003年に、貸金業規制法及び出資法の改正等、貸金業に関連した法改正がなされ、それぞれ一定の成果が報告されています。しかし、依然、多重債務問題は深刻さを増し、自己破産の申立件数は、2003年には24万2357件に達し、2004年は21万1402件、2005年も減少はしたものの19万件を超え、2006年も同水準を維持しているなど、高水準にあります。また、破産には至っていないものの、その虞のある人は、100万人とも、200万人とも言われています。そして、経済的理由による自殺者は約8000名(2004年度は7947人)にも昇り、全体の自殺者数に占める割合もここ数年で急増しています。
  このように自己破産等の法的救済も図り得ないものも含めると多重債務者の数は、相当数に昇ると推測されます。
  さらに、このような多情債務問題が、ホームレス、離婚、児童虐待、犯罪等の被害を引き起こす要因となっているケースも少なくなく、多重債務問題は、依然、社会問題として極めて深刻な状況にあります。
3 多重債務問題の要因は高金利
  もともと利息制限法は、経済的弱者の立場に置かれた人々を暴利から保護する強行法規であり、その定めを超過する利息は、無効と定められているところ、貸金業者は出資法の上限である29.2%を超えた場合にのみ処罰されるため、利息制限法を超過しつつ、出資法の刑罰金利未満で利息制限法を超過する利率による貸付が氾濫しています。このような状況で、銀行貸出約定平均金利は、数年来2%を切る状態で低迷しており、出資法で規制する29.2%が如何に異常な高金利であるかは明らかです。
  そして、一般市民においては、貯蓄がなく、その収入も安定していない者も少なくなく、未だ景気が全面的に回復しているとは言い難い状況です。もともと、貸金業者の顧客層は主として銀行や勤務先からの低金利の借入が困難な者であり、また、収入が将来上昇する要素も限られている現状に鑑みれば、生活を破綻しない限度で可能な返済額は限られているものであって、病気・怪我、その他突発的な資金需要のため、出資法の異常な高金利を前提に借入を受ければ、僅かな借入額であったとしても、家計を圧迫し、返済困難な多重債務者に陥る要因とならざるを得ません。
  従いまして、早急に、出資法の上限金利を引き下げることが必要です。
4 グレーゾーンの不合理性と「みなし弁済」規定の撤廃
  他方、多くの貸金業者は、銀行等からの低金利を利用した資金調達やCM広告等により、出資法の上限金利に近い高金利にて貸付を行い、貸出額等をのばし続け、他企業を凌駕する高収益をあげているところです。
  このような金利による貸付の背景には、出資法と利息制限法の二段階による金利の規制といういわゆるグレーゾーンを設け、利息制限法の制限超過利息の支払を一定の厳格な要件のもとに有効とする貸金業規制法第43条(以下、「みなし弁済規定」といいます。)の存在があると思われます。しかし、前記のごとく、経済的弱者の立場に置かれた人々を暴利から保護する強行法規である利息制限法の例外を認めるみなし弁済規定は、本来的に、その立法趣旨に反する不合理な規定と言わざるを得ません。そして、同法の要件の充足については、最高裁判所(とりわけ2006年(平成18年)1月13日判決)が債務者保護のため極めて厳格な解釈を要求しており、実際に同法の要件を充たして、利息制限法の制限超過利息を要求している業者は皆無に等しいという状況にあります。
  すなわち、私法上無効な利息の支払いを要求している業者が大多数であるという現状にあり、みなし弁済規定の存在意義は、もはや認めがたいものであるとともに、金利に関するグレーゾーンの存在は、不合理なものでしかありません。
  従いまして、出資法の上限金利を利息制限法の制限金利まで引き下げを行い、金利に関するグレーゾーンを撤廃するとともに、存在意義を欠くこととなるみなし弁済規定を撤廃することが必要です。
5 日賦貸金業者等の特例金利の撤廃の必要性
  出資法の附則において、日賦貸金業者(日掛け金融)及び電話担保金融については、年54.75%まで認める旨の特例金利が定められています。
  しかしながら、日賦貸金業者については、返済方法の多様化が進んでいる現在において、集金による毎日の返済という形態にのみ特例を認める必要性はなく、むしろ、厳格な要件を守ることなく違法行為が横行し、悪質な取立の温床となっているという実情も存在します。
  また、電話担保金融においても、もはや電話加入権の財産的価値が失いつつある現在において、電話担保金融に特例を認める社会的・経済的な必要性は乏しいと言わざるを得ません。
  従いまして、必要性が乏しく、むしろ、高金利の徴収の口実として悪用される弊害が大きい日賦貸金業者及び電話担保金融における特例金利の撤廃をすることが必要です。
6 保証料名目で利息制限法の潜脱を防止する必要性
  債務者が名目如何を問わず利息制限法を超える金員を徴収されれば、利息制限法の趣旨は没却され、上記改革も骨抜きのものとなってしまいます。しかし、貸金業者の中には近時、実質的には同一のまたあるいは、経済的つながりのある別会社を利用して保証料名目で、金員を徴収し、利息制限法の潜脱を計ろうとする動きがあります。この点を防止する必要があることは明白です。
7 小額短期貸付等についての特例規定の阻止
  以上の状況のなか、出資法上限金利引き下げ問題は、国会に舞台が移り、7月6日、自民党及び公明党により、「貸金業制度等の改革に関する基本的考え方」が発表されました。同考え方では、金利問題については、@グレーゾーン金利の廃止、A原則として出資法上限金利を利息制限法まで引き下げること、B日賦貸金業の特例廃止という評価できる方向性が打ち出されています。これは一連の最高裁判決及び金融庁「貸金業制度等に関する懇談会」の「座長としての中間整理」(http://www.fsa.go.jp/singi/index.html)の方向性にも沿うものであります。
  ところがその一方で、検討課題として、(ア)小額短期貸付等について特例を設ける、(イ)利息制限法の制限金利の金額刻みを見直す、(ウ)利息制限法の制限金利を20%に一本化する、などというきわめて危険な内容も盛り込まれています。
  (ア)においては少額の上限額の定め方次第で、多重債務者の大多数の貸付がこれに該当し、上記の方向性は骨抜きにされる危険が高く、現にかかる働きかけを強めている貸金業界側の意図はその点にあると言えます。(イ)(ウ)においては現行の利息制限法の上限金利の引き上げにつながり、上記の利息制限法の趣旨に鑑みれば到底容認することは出来ません。
  楽観的なマスコミ報道とは裏腹に、貸金業界の猛烈な巻き返しにより、出資法上限金利の引き下げの骨抜きに加え、利息制限法の改悪すら実現されかねない状況が生じています。
8 弁護士会、司法書士会等の動き
  以上の認識に基づき、日本弁護士連合会、日本司法書士会、その他、東京三弁護士会、をはじめとする全国各地の弁護士会、司法書士会において、上限金利を引き下げる等の意見書、会長声明、総会決議等が採択されているところであり、本陳情もこの流れのもと、東京三弁護士会が連携して行っているものです。
  また、各地においても、本年7月27日現在で、東京都議会をはじめ計38の各都道府県議会、及び849の全国市町村議会において同旨の請願書が採択されているところです。東京都下の議会においても新宿区、三鷹市、東村山市において既に採択が為される動きとなっています。
  そして、日本弁護士連合会に続き、東京三弁護士会においても、「上限金利引き下げ実現本部」を設置するとともに、この動きは既に全国の各弁護士会に広まっております。
上記のとおり、陳情致します。

    添付書類
  出資法及び貸金業規制法の改正に関する意見書(案)
  東京都議会採択の意見書
  日弁連会長声明
  東京弁護士会意見書
  日弁連作成パンフレット

  平成18年8月18日

台東区議会議長
   高 柳 良 夫 殿